周易古占例

古書(明治・大正含)に見える周易の占例を掲載します

真勢中州とその一門の占例(6) 「養子取りの成否」、「手代2人のうち、どちらを番頭にするか」

天元春日  周易古占例 6


本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。


【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(6)】


ー真勢中州について


真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。


『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、


「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」


と記されています。


ー真勢中州とその一門の占例


(11)は「養子取り」の成否、(12)は「手代2人のうちどちらを番頭にするか」の占例です。


(11)或商家(あるしょうか)衰(おとろ)えたる所金五十両の持参(じさん)にて養子(ようし)に来るものを媒(なこうど)せんと云。成(なる)か否(いなや)を問う。故に筮して需(じゅ)を得たり。占之曰需(じゅ)は待(まつ)なり。調(ととの)わざるに非ず。然れども今整(ととなう)るに非ず。先天方位(せんてんほうい)にて考るに本巽なり。今坎になり又艮(ごん)に之意(ゆくい)あり。然れば我より進むときは小畜(しょうちく)となり又需(じゅ)となる故に此所にて待(まつ)べし。坎(かん)より艮(ごん)となれば大畜(たいちく)となる。大畜は養子(ようし)来(きた)るの象なり。又乾(けん)の三爻は三貫目(かんめ)の数あり。故に金五十両持来(もちきた)るべしという。果して養子金を持参(じさん)せり。

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(12)或商家(あるしょうか)の手代(てだい)番頭(ばんとう)とすべき者二人あり。何(いずれ)を番頭(ばんとう)とすべきや吉凶を問う。これを筮して蒙(もう)の予(よ)に之(ゆく)を得。占之曰、一の手代は蒙(もう)の上爻(じょうこう)に当たる。ニの手代は二爻(こう)に当たる。然るに一の手代蒙昧(もうまい)なり。
故に亢(たかぶ)り誇(ほこ)る者ならん。又二の手代一の手代の艮山(ごんざん)に押(おさ)えられて険(なや)めども、中(ちゅう)を得たる者なり。故に亢(たかぶ)り誇(ほこ)る者ならん。又二の手代一の手代の艮山(ごんざん)に押(おさ)えられて険(なや)めども中(ちゅう)を得たる者なり。かつその爻辞(こうじ)に曰(いわ)く、子(こ)克レ家(いえをよくす)と。故に二を番頭として宜(よろし)からん。又一の手代蒙(もう)をなす者なれば、家内を蒙昧(もうまい)にするものなり。退(しりぞ)けて可(か)ならん。二を番頭としたらば上爻(じょうこう)の一手代暇(いとま)を取(とっ)て退(しりぞ)くべし二の手代一段(だん)上(のぼっ)て予(よ)となさば番頭の正位(せいい)を得て其人出精(しゅっせい)して吉なりと云うに皆中(みなちゅう)す。

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※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』


ー真勢中州の占法を知るための参考文献


真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。


加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。


○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。


○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。


【執筆者】


天元春日(あまもとはるひ)
                        易占研究家。神道家。


Twitter 】「天元春日」で検索してください。


【ココナラ】 「天元春日」で検索してください。


【著書】


○『年卦八索法  平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle


《内容》
  平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。


  本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
  また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。


○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle


《内容》
  江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
  易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。


【出版物】


○『大島中堂選集』1250円(Kindle


《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。


周易愛好者必携の書です。


収録書籍


1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』

2、 『易学千里眼
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)

真勢中州とその一門の占例 (5) 後継者の選定、婚姻の成否

天元春日  周易古占例 5


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【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(5)】


ー真勢中州について


真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。


『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、


「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」


と記されています。


ー真勢中州とその一門の占例


(9)は後継者の選定、(10)は婚姻の成否の占例です。


(9)あるいは曰く予(よ)子(こ)二人あり。
男子となり。然るに女子は姉(あね)なれば甥(むこ)を取りて嗣(よつぎ)とせんや、他に嫁(か)せしめて吉なりやを問う。
よりてこれを筮して賁(ひ)の大有(たいゆう)に之(ゆく)を得。
占之曰、離は日なり。中女(ちゅうじょ)なり。艮(ごん)は山なり。家なり。乾(けん)は天なり。外なり。賁(ひ)は文飾(ぶんしょく)なり。大有(たいゆう)は家を有(たも)つなり。
けだし女中(じょちゅう)家に在るは賁(ひ)の卦(か)にして、賁(ひ)を文飾(ぶんしょく)とすれば、外見(がいけん)はよけれども日、山の下にあって用をなさず。
中女(ちゅうじょ)外に出れば大有(たいゆう)にして、その家を有(たも)つ、
尚(なお)日(ひ)の天にあるが如し。故に賁(ひ)の大有(たいゆう)に之(ゆく)は中女(ちゅうじょ)、家を出て外に帰(とつ)ぐの象なり。
これに由て観れば他に嫁(か)せしめて吉なりという。果して富家(ふうか)の妻(め)となる。

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(10)余武庫に遊学せし時に書肆(しょし)某なるもの大阪従弟(いとこ)に女を媒酌(ばいしゃく)して婚姻(こんいん)の期(ご)になりければ再浪華(ろうか・なにわ)に到(いたっ)て婚(こん)を調(ととの)へんとするに望で親筮(みづからぜい)して革(かく)ノ既済(きせい)に之(ゆく)を得たり、以て余に示す。余占之曰革は改革(かいかく)の義既済(きせい)は盡(つくる)の象あれば此婚姻(こんいん)は調(ととな)ひ難き意あり且外卦(がいか)の兌口(だこう)相背(あいそむく)の象にして坎(かん)と変ずれば内卦(ないか)の離火(りか)を尅(こく)す。是彼より我を尅するなり。【周易には生克を用ることなしといえども、勝敗の占に於いては生克を用るなり。下條応対勝敗の占に於いて生克を用るもの是なり。五行生克の説は詳に易学階梯附言に見たり。言煩故に略す】此女の法より約(やく)を背(そむ)くの象あれば凶なりと示(しめ)す。某なるもの従弟(いとこ)の家に到(いた)れば女の方、にわかに約(やく)を背
(そむ)き昨夜彼方(かのかた)より納徴(ゆいのう)を返せりと云えり。

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※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』


ー真勢中州の占法を知るための参考文献


真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。


加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。


○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。


○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。

 


【執筆者】


天元春日(あまもとはるひ)
                         易占研究家。神道家。


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【著書】


○『年卦八索法  平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle


《内容》
  平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。


  本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
  また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。


○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle


《内容》
  江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
  易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。


【出版物】


○『大島中堂選集』1250円(Kindle


《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。


周易愛好者必携の書です。


収録書籍


1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』


2、 『易学千里眼
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)

真勢中州とその一門の占例 (4) 一身の吉凶、婚姻の吉凶

天元春日  周易古占例 4


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【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(4)】


ー真勢中州について


真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。


『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、


「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」


と記されています。


ー真勢中州とその一門の占例


(7)は一身の吉凶、(8)は婚姻の吉凶の占例です。


(7) 先生、泉州(せんしゅう)貝塚(かいづか)に遊歴(ゆうれき)の時、或医師(いし)の息(むすこ)旅亭(りょてい)に来て身の吉凶を問う。
これを筮して乾(けん)の不変(ふへん)を得。
占之曰、吾子は人と不和(ふわ)なる意あり。
親(おや)に従(したが)わざる意あり。
驕(おごる)意あり。亢(たかぶる)意あり。遠行(えんこう)の意あり。(皆乾の象)
かつ前年(ぜんねん)、瘡毒(そうどく)を病(やみ)たることあらん。
医生(いせい)がいわく、然り。先生また示(しめ)していわく、今より再病(ふたたびやむ)意あり。
その病、頭(づ)へ上(のぼ)り、腐爛(ふらん)して命(めい)にも係(かか)ることあらん。
慎(つつし)むべしという。
後果して瘡毒頭(そうどくづ)に発して死せり。
これ白蛾先生、天眼通(てんがんつう)の占法に倣(なら)うの密象なり。


(8)或人(あるひと)、余に婚姻(こんいん)の吉凶を問う。
筮して臨(りん)の節(せつ)に之(ゆく)を得。
占之曰臨(りん)は非彼我相望(ひがあいのぞむ)なり。
節(せつ)は節義(せつぎ)を守るの義あり。
かつ坎(かん)の中男(ちゅうだん)、上に位(くらい)し、兌(だ)の少女(しょうじょ)下に居て男女位を正(ただし)くし、宅(いえ)齊(ととなう)なり。吉(きつ)孰(たれ)か此(これ)より大ならんという。終に娶(めとっ)て吉なり。

 

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※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』


ー真勢中州の占法を知るための参考文献


真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。

 


加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。


○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。


○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。


【執筆者】


天元春日(あまもとはるひ)
易占研究家。神道家。


Twitter 】「天元春日」で検索してください。


【ココナラ】 「天元春日」で検索してください。


【著書】


○『年卦八索法 平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle


《内容》
平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。


本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。

 


○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle


《内容》
江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。

 

 


【出版物】


○『大島中堂選集』1250円(Kindle


《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。


周易愛好者必携の書です。


収録書籍


1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』


2、 『易学千里眼
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)

真勢中州とその一門の占例(3)屋敷を求めるに際しての吉凶、運気の吉凶

天元春日  周易古占例 3


本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。


【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(3)】


ー真勢中州について


真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。


『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、


「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」


と記されています。


ー真勢中州とその一門の占例


(5)は屋敷を求めるに際しての吉凶、(6)は運気の吉凶の占例です。


(5)或下舎(あるひとしもやしき)を求(もと)むるの吉卦を問う。
筮(ぜい)して家人(かじん)の中孚(ちゅうふ)に之(ゆく)を得たり。
占之曰家人ハ家ノ卦(か)、中孚(ちゅうふ)は彼我相向(ひがあいむこう)て信(まこと)あるの象なれば求(もとめ)て吉なりと云う。
遂に求めて吉なり。
以上は余(注・谷川順祐)並に同門の占を記す。
故に姓名を略す。師家の占は先生と記して門人の占と別つ。
下これに倣(なら)え。

 

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(6)栄田氏(さかだうじ)運気(うんき)の吉凶を筮して大畜(たいちく)の益(えき)に之(ゆく)を得。
先生(注・真勢中州)占之曰吉なり。
大畜(たいちく)は、「たくわうる」なり。益(えき)は「さかうる」なり。
乾(けん)は健(けん)なり。震(しん)は動(どう)なり。乾震(けんしん)となる。健(すこやか)にして動くの義なり。
艮(ごん)は篤実(とくじつ)なり。巽(そん)は遜従(そんじゅう)なり。
艮巽(ごんそん)となる。篤実(とくじつ)にして遜(したが)うの象なり。
又大畜(たいちく)は止(とどむ)なり。益(えき)は恵(めぐむ)なり。
大畜(たいちく)の益(えき)に之(ゆく)、驕(おごり)の止(とど)めて人を恵(めぐ)むの意あり。
故に内剛健(うちごうけん)にして能勤(よくつと)め、外(ほか)篤実(とくじつ)にして能遜(よくしたが)う。
是以て驕(おごり)を止(とど)めて人を恵むときは必昌ん。
且(かつ)夫乾(けん)は金(きん)なり。玉(ぎょく)なり。艮(ごん)は止(し)なり。
大畜(たいちく)は聚(あつむ)なり。蘊(つつむ)なり。養(やしなう)なり。震(しん)は動なり。巽(そん)は遜(したがう)なり。益(えき)は増(ます)なり。大畜(たいちく)の益(えき)に之(ゆく)は此財を聚(あつ)め宝を蘊(つつ)み、人を養い業(ぎょう)を増(ま)すの卦なり。
吉孰(きつたれ)かこれより大ならん。其必蕃昌(はんじょう)せん。
後果して其言の如し。 此國語司空季子の占辞に倣う。
もと漢文なり。今、其意を取て和解す。

 

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f:id:amamotoharuhi:20220118190056j:image


※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』


ー真勢中州の占法を知るための参考文献


真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。

 


加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。


○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。


○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。

 


【執筆者】


天元春日(あまもとはるひ)
                         易占研究家。神道家。


Twitter 】「天元春日」で検索してください。


【ココナラ】 「天元春日」で検索してください。


【著書】


○『年卦八索法  平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle


《内容》
  平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。


  本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
  また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。

 


○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle


《内容》
  江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
  易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。


【出版物】


○『大島中堂選集』1250円(Kindle


《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。


周易愛好者必携の書です。


収録書籍


1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』

2、 『易学千里眼
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)

真勢中州とその一門の占例(2)米価の高低、井戸から水がでるか否かの占

天元春日  周易古占例 2


本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。


【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(2)】


ー真勢中州について


真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。


『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、

 


「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」


と記されています。

 


ー真勢中州とその一門の占例


(3)は米の値段の高下を占ったもの、(4)は井戸を掘るに際して果たして水が出るかどうかを占っています。


(3)同(※前回の続き、丙辰年)米値(こめのあたい)の高低(こうげ)を筮して臨(りん)の夬(けつ・かい)に之(ゆく)を得。


占曰(せんにいわく)臨(りん)は地下に沢あるの象にして始安(やす)き意なり。夬(けつ・かい)は臨(りん)の内卦(ないか)の兌(だ)易位(えきい)して天上(てんじょう)に升(のぼ)るの象なれば七月に至て大に上(あが)るべし然れども兌(だ)は止水(しすい)たれども潤下(じゅんか)の性(せい)にして久しく天に止(とどま)るものに非ず。


必ず再易位(ふたたびえきい)して訟(しょう)となり  【易位生卦ハ範□ニ見エタリ 天より下(くだ)るの意】


天より下(くだ)るの意あれば七月に天井数出(てんじょうねすういで)、それより安く往来高下(おうらいこうげ)あるべしというに中(ちゅう)す。
【兌乾ともに秋に取る。かつ直数的中すといえども密象なれば略す。】


※真勢中州は米相場の高下について、その研究の成果を「八木相庭高下之論」(やぎそうばこうげのろん)という書物にまとめています。
ちなみにこの書には「臨(りん)、夬(けつ・かい)」それぞれについて


「臨」・・・次第に高き象なり  この卦は萃より易位して下ると見るなり。しかれども兌沢底値となりて将来上るの意(こころ)なり
「夬」・・・沢気天にのぼるの象あり  大に高き卦なり。しかれども定三(じょうさん・過去、現在、未来)と窮理(きゅうり)とをかんがえて高下をはかるべし


と書かれています。

 

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(4)甲子(きのえね)二月、或邸(あるてい)に掘貫(ほりぬき)の井(い)を造んとす。
水出るや否(いなや)を筮(ぜい)して復(ふく)の震(しん)に之(ゆく)を得たり。
占之曰(いわく)、初爻を石とす。この石まで鉄棒通(てつぼうとおり)て後、又中段(ちゅうだん)に石出来(でき)て 震為雷(しんいらい)の象 始ノ棒(ぼう)却て中段にて止り、下へは通(とお)らぬ象なり。
故に水出まじというに中(ちゅう)す。


※これは確か加藤大岳先生の本にも占例として紹介されていたと思います。

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※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』

 


ー真勢中州の占法を知るための参考文献


真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。

 


加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。


○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。


○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。

 

 


【執筆者】


天元春日(あまもとはるひ)
易占研究家。神道家。


Twitter 】「天元春日」で検索してください。


【ココナラ】 「天元春日」で検索してください。


【著書】


○『年卦八索法 平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle


《内容》
平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。


本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。

 


○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle


《内容》
江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。

 

 


【出版物】


○『大島中堂選集』1250円(Kindle


《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。


周易愛好者必携の書です。


収録書籍


1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』


2、 『易学千里眼
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)

真勢中州とその一門の占例(1)晴雨、稲の豊凶の占

天元春日  周易古占例 1  


本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。


【易学・易占界において「2千年来の1人」と称された真勢中州とその一門の占例(1)】


ー真勢中州について


真勢中州(ませ・ちゅうしゅう)は、日本の易学史上、最も有名な人物の一人です。


『浪速人傑談』の伝えるところに依ると、

 


「真勢中州。名は達富、字は発貴、中州と号し、また復古堂と号す。俗称を彦右衛門という。尾張の人。天性・廉直にして、若くして易学を好み、新井白蛾(あらいはくが)に従いて学び、なお自ら研究して遂に易道に妙を得たり。中年の後は浪花(なにわ)に移り、専ら易学を講ず。また象蓍(しょうし)を作り、爻卦(こうか)を製し、易経の本文を錯綜(さくそう)して『復古易経』と唱え、其の占験の群に秀逸せること、精義入神にして、世・二千年来の一人と称す。文化十四年丁丑二月四日、齢六十四にて終る。歿後、北野寒山寺に墓石を立つ。」


と記されています。

 


ー真勢中州とその一門の占例


(1)は天気(晴雨)を占ったもの、(2)は稲の豊凶を占っています。

 


(1)甲戌(きのえいぬ)七月十六日に翌十七日、十八日両日の晴雨(せいう)を筮(ぜい)す。


十七日に晋(しん)の観(かん)に之(ゆく)を得、


十八日に困(こん)の萃(すい)に之(ゆく)を得。


占日晋(しん)は日地上(ひ、ちじょう)に升(のぼり)て萬國を照すの象。


観(かん)はハ風地上(かぜ、ちじょう)を行(ゆく)の象なれば


十七日は晴天にて午後より風あらん。


又困は水沢下(みず、たくか)に漏下(もれくだる)の象。


萃(すい)は地上に止水(しすい)あるの象なれば十八日は大雨ならんと云う。


悉中(ことごとくちゅう)す。

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(2)丙辰の年、豊凶(ほうきょう)を筮して訟(しょう)の不変を得たり。


爻卦(こうか)は震震震兌震兌なり。


占レ之曰(これをせんしていわく)、正月より六月までは雨多からん。


亦七月より十二月までは晴多からん。


爻卦を見れば東國は豊年(ほうねん)ならん。


西國は雨多くして凶作(きょうさく)なるべし。


卦象と爻卦を以て云う。


米は始安(はじめやす)くして半(なかば)より上(あが)るべしと云う。


果して中(ちゅう)す。

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※出典 谷川順祐(竜山)『周易本筮指南』

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ー真勢中州の占法を知るための参考文献


真勢中州の易法につきましては、先に紹介した人物伝に「爻卦を製し・・・」とありますように、独特の占法があります。
ここには詳述しませんが、真勢易の占法を知るための参考文献を紹介します。

 


加藤大岳 『奥秘伝書・真勢易秘訣』 紀元書房
ー非常に詳しく、わかりやすい本ですが絶版です。古書店で探すと見つかる可能性があります。


○『真勢三秘伝』
ーこれも絶版なので古書店で探してください。3000円くらいで販売されています。


○大島中堂 『真易中州の易学』
ーオリジナルは絶版ですが、復刻版が『大島中堂選集』1250円(Kindle)に収められています。

 

 


【執筆者】


天元春日(あまもとはるひ)
                         易占研究家。神道家。


【ココナラ】 「天元春日」で検索してください。


【著書】


○『年卦八索法  平田篤胤の易学研究』1250円(Kindle


《内容》
  平田篤胤の易学占法「年卦八索法」を見直し、解釈しました。


  本書では、平田篤胤が『太昊古易伝』に述べている年卦八索占法を整理し、不備と思われるところを生田萬、新田目道茂等の著書から補い、さらには同法の理論を展開して、より詳細な占断法について考察。
  また別途筮法や思想的な背景についても本文を要約して紹介し、それによって年卦八索法の体系化を試みました。

 


○『考古易説ー日本神話・古典による易教解釈ー 附・平田易納甲表』300円(Kindle


《内容》
  江戸時代末期〜明治初期に、国学者によって書かれた書籍を翻刻・編集。
  易の64卦を神話や古典の事象を当てはめて解説しています。
平田易による独自の納甲表も収録。

 

 


【出版物】


○『大島中堂選集』1250円(Kindle


《内容》
大正〜昭和初期に活躍した易占の大家、大島中堂氏の著書を選集という形でまとめました。


周易愛好者必携の書です。


収録書籍


1、 『周易埋物霊祟秘伝 全』

2、 『易学千里眼
3、 『真易中州の易学』
4、 『五段論式必中占法』
5、 『易学速成講義録』(全六巻)